自分の口腔内を観察してみましょう!!

この上記の2つの写真の前歯は、健康的な天然の歯です。一般の人から見ますと歯並び等で好き嫌いはあるかと思いますが(それは置いておきまして)、歯を拡大してみますと、色調はいろんな色で構成されており、明るい色調をしていることが解ると思います。

 

我々歯科関係者から見ますと、こういった自然の歯は美しい、その周辺の歯肉(歯ぐき)も綺麗だなと感じます。一つの歯の中にいろんな色が散りばめられておりますが、これば相手との対話距離になった時にはこの散りばめられている色は一つになり、自然な色調に見えます。そこで、皆さんも自分の口の中を鏡で観察してみましょう!!

 

 

あなたの口の中は、こんなではありませんか?!

Cace-1:上顎6本のポーセレンブリッジの口腔内

 前歯6本が連結されたセラミックスのブリッジが入っています。

 

 

主訴

 セラミックスの根元の黒くなっている処が気になる事で来院。

 

技工士からの所見

写真の◯で囲んだ処が黒ずんで見えます。これは歯の根にあたる部分で、このポーセレンブリッジの柱(土台)となっている部分です。他の真ん中付近の3本は、本来は歯が欠損しており、土台同士を繋ぐ橋渡しだけの歯になっております。そのためその部位は歯肉に乗っかっているだけですので、根元が黒くはなっていません。

 

 

せっかく歯科治療を受けても、このような口元ですと台無しですし、お金の無駄となってしまいます。

 

 Cace-2:上顎4本のポーセレンブリッジの口腔内

 前歯4本が連結されたセラミックスのブリッジが入っています。

 

 

主訴

前歯4本が連結された色調、形態と共に自然観の無いセラミックスのブリッジが嫌で来院してきました。

 

技工士からの所見

このケースの患者は20代の女性でした。このセラミックスブリッジを装着されてからそんなに期間が経っていないと想像できます。患者の主訴の通り、このセラミックスブリッジは粗末なメタルセラミックスクラウンが装着されており、患者自身は気がついていませんでしたが、歯肉は赤く腫れています(◯で囲んだところ)。

 

 

Cace-3:上顎5本のポーセレンブリッジの口腔内

 前歯5本が連結されたセラミックスのブリッジです(向かって左側の犬歯は天然歯)。

 

主訴

メタルセラミックスブリッジの根元の黒くなっている箇所が気になり来院。

 

 

技工士からの所見

Case-1と同じように土台の根元が黒くなっています。(真中の写真)

 

この写真は斜めに曲がって撮影されているように見えますが、実はこのように曲がった軸のポーセレンブリッジが入っています(写真3)。(それによりこの人の口元は曲がって見えていたはずです。)

 

この患者さんの上顎は、向かって左側の犬歯以外は、セラミックスクラウンが入っています(写真で見える範囲では上顎だけで12本のセラミックスクラウンが装着されています)。また、左右の臼歯の高さにも違いが見えます(向かって右側の写真・青い点線)。

 

 

 

もし、私が患者であるとしたならば、これらのケースの中では口腔内に最も装着して欲しくないタイプのポーセレンブリッジです。

 Cace-4:上顎5本の保険治療・レジンブリッジの口腔内

この補綴物は保険治療で、表側はレジンで製作されており、材質が柔らかいためにセラミックスとは違い、表面に艶が無い事が判ります。
この補綴物は保険治療で、表側はレジンで製作されており、材質が柔らかいためにセラミックスとは違い、表面に艶が無い事が判ります。

 

 主訴

保険で治療したレジンの前歯部をセラミックスクラウンに置き換えたい。

 

技工士からの所見

この前歯部のブリッジの素材はセラミックスではなく、レジンで製作されています。レジンとは簡単に言いますと強化プラスチックと思ってください。そのためセラミックスと比べて柔らかく、すぐに艶が無くなりがちです。

 

問題提起

ここで、私が述べたいのは、上記のケースとは素材の違いのために艶は違うにしても、ダメな補綴物が口に入っている場合には、基本的にポーセレン(自費治療)とレジン(保険治療)のブリッジでは材質の違いはあれども、

「他の人から見た歯の印象はあまり違わない」

ということです。

 

 しかし、患者の支払う費用は保険治療と自費治療とでは、見た目以上の大きなものです。そういうことを考えますと、決して安くは無い自費の治療の存在意義が、全く解らなくなります。そこが、歯科治療の怖いところでもあります。 

歯科治療の際に知って欲しい事 

 

私は色々と患者の口の中を見る機会がありますが、その時に綺麗な補綴物(セラミックスクラウン等)に出会うことは、滅多にありません(たまに出会うことがあります)。日本には他国に比べて良い歯科技工士の割合が多いのにも関わらずです。それだけ、短い時間と安い料金によって技術が割り引かれたセラミックスクラウンが歯科界に横行しているということです。

 

何故、世間ではそう言った補綴物*が普通に横行しているのでしょうか? それは欧米のような審美眼を持って、こだわっている日本の歯科医師、患者が残念ながら多くいないからだと私は思っています。

*補綴とは、身体の欠損した部位の形態と機能を人工物で補うことを指します。

 

 

 

歯科治療の際に満足する歯を手に入れるための5つの項目

 

(1)セラミックスクラウンの良し悪しは、歯科技工士で決定します。

皆さんが綺麗な補綴物を選択するためには、歯科院を選ぶよりも歯科技工士を選択しなければならないということは、理解していただけたかと思います。ですので、あなたの満足する補綴物を手に入れるためには、良い歯科技工士を選択しながら歯科医院を選ぶということも必要になってくるでしょう。

 

(2)歯科技工士はどの歯科医院からでも指名できます。

治療の際にはどこの地域の歯科医院において、患者自体が我々の歯科技工所(オーラルデザイン彩雲)を歯科医師に指名する事は可能です(全ての歯科医院がそれを受け入れるわけではありませんので、そう言った場合には我々に相談していただけますとお力になれると思います。)。

 

(3)あまり安い治療費の歯科治療は選択しない方がいいです。

あまり安い歯科治療は、基本的に避けた方が良いと思います。綺麗な補綴物を制作するまでの過程には多くの手間だけではなく、歯科医師、歯科衛生士の労力 + 歯科技工士の手がかかっております。また、そこにかかる材料費も決して安いものではありません。それらの経費を考えますと、治療費が安くなると何処かの作業や、材料に皺寄せが生じます。その皺寄せの順番は、立場の弱い者ほど被害を被ります。また、(4)の問題にも繋がります。

 

(4)中国技工には気をつけましょう。

せっかくお金を払っても、技工士を選ばないと上記のような例の事態になってしまいますし、最近では中国に補綴物を依頼する歯科医院も増えてきています。 自分の口は、自分で守る必要があります。

 (5)自分の口腔内に興味を持ちましょう!

もっと自分の口腔内に興味を持ってください。残念ながら日本人のデンタルIQは、他国の先進国に比べ低いです。これは一般市民だけの問題ではなく、歯科関係者も含めての問題です。これは保険治療が安易にできるといったことも他国とは違うことなのですが、それだけ歯科治療を安易に考えているということにも繋がります。

 

今まで、歯科医院だけを選択していた歯科治療を、これからは「歯科医院」、「歯科技工士」の二つを自分で選択できる事は、今までの歯科治療とは違った世界が見えてくるはずです。